ANAKUMA CAFE

ANAKUMA CAFE|ストーリー設計という仕事

――カフェを「世界」にするためにやったこと

はじめに

ANAKUMA CAFE(アナクマカフェ)は、
  • 「熊の手が穴からコーヒーを渡してくれる」という、非常にシンプルで強いアイデアから始まったカフェです。
店内に座席はなく、
お客さんは壁に空いた穴の前に立ち、
熊の“手”とだけコミュニケーションを取りながらコーヒーを受け取る。
世界観は、壁一枚分しかありません。
それがこのカフェの最大の制約であり、最大の魅力でした。
私はこのプロジェクトで、
  • 「ストーリーと思想の設計」という役割で関わっています。
この記事では、
・なぜ物語が必要だったのか
・どんな思想で世界を組み立てたのか
・それがどうビジネスや体験に繋がっているのか
その裏側を、プロジェクトレポートとしてまとめます。

ANAKUMA CAFEという体験

ANAKUMA CAFEの体験価値は、
コーヒーそのものよりも 「待ち時間」 にあります。
どの熊が担当してくれるのか
手の毛並みや仕草から誰なのかを想像する
熊ごとの性格を感じ取る
この「制約のあるコミュニケーション」そのものが体験です。
結果として、
1杯1,000円〜2,000円という価格設定が成立していますが、
それは“モノの価格”ではなく、
時間と意味の価格だと考えています。

なぜストーリーが必要だったのか

ANAKUMA CAFEは、すでにアイデアとして非常に強い。
だからこそ、必ず模倣される
実際、似たようなコンセプトのカフェは次々に出てきました。
ここで重要になるのが、
「なぜ熊がカフェをやっているのか」
「この世界は、どんな思想で成り立っているのか」
という意味のレイヤーです。
可愛いから行く、ではなく
「私はこの世界観に賛同している」と思ってもらう。
ファンを“消費者”ではなく“参加者”にするために、
物語が必要でした。

現実とフィクションをつなぐという設計

ANAKUMA CAFEは、
現実世界に存在する「お店」です。
同時に、
穴の向こう側では、現実では説明のつかないことが起きている。
・人語を話す熊
・知性を持つ存在
・記憶に触れられる存在
これは完全なファンタジーです。
この「現実 × ファンタジー」をどう接続するかが、
ストーリー設計の最大のテーマでした。

世界観のベースになった思想

大きなヒントになったのが、以下の2つの考え方です。
  • オムロンが提唱する
    • SINIC理論(社会・技術・科学の相互進化)
  • 落合陽一氏の
    • デジタルネイチャー(デジタルも自然になるという思想)
この2つを掛け合わせ、
ANAKUMA CAFEの「未来史」を設計しました。

ANAKUMA CAFEの裏側にある大きな物語

結論から言うと、
穴の向こう側は「未来」に繋がっています。
その未来は、
環境破壊が進み、
自然そのものだけでなく、
人間の自然観が崩壊した世界です。
人類は、自然を守れなかった。
だから「自然を模倣する」方向へ進んだ。
人工の森
人工の生命
やがては、魂や記憶までも人工的に扱うようになる。
記憶は“波”として扱われ、
不要な感情や苦しみは外部に移され、
最終的には「記憶結晶」として物質化されます。
この世界で生まれたのが、
人の記憶を内包した熊たちです。

クマノコドウという場所

8頭の熊が住む場所は
  • 「クマノコドウ」と呼ばれています。
そこは、
記憶結晶が大量に残る“記憶の爆心地”。
いわば、
人間の記憶が黄泉の国のように堆積した場所です。
熊たちは、
人間の記憶と共に生きる存在になりました。
そして、
その場所から現代へと繋がる“穴”を通じて、
人間と再び接触する方法として選んだのが
  • 「カフェ」でした。
人間の記憶の中で、
最も優しく、平和だった空間だからです。

ストーリーは「見せるため」ではない

重要なのは、
この壮大な物語をそのままお客さんに見せないことです。
このストーリーは、
運営側・制作側が共有する
思想と判断基準のためのOSです。
・なぜ環境問題に取り組むのか
・なぜ熊は知性を持つのか
・なぜカフェなのか
すべてに一貫した理由が生まれます。

体験・商品・IPへの展開

このストーリーがあることで、
すべてに意味を持たせられます。
  • 記憶結晶 → 金平糖やスイーツ表現
  • ガチャ → 記憶結晶の採掘体験
  • メニュー → 熊の性格との紐付け
  • 映像・SNS → クマノコドウの日常描写
さらに、
アニメ、ゲーム、NFTなどへの拡張も
すべて物語起点で成立します。

SNS × 現実世界の融合

次のフェーズでは、
現実のカフェとデジタル世界を連動させています。
昼、カフェで体験した出来事が
夜、SNSや映像で補完される。
昨日SNSで見た熊の行動が、
今日のメニューに反映されている。
人は、
24時間ANAKUMAの世界に触れ続けられる
これは
「来店体験」ではなく
  • 「世界への滞在」を設計する試みです。

ストーリーの力

ストーリーの強さは、
・哲学を作れる
・共感を生める
・余白を設計できる
・IPとして拡張できる
という点にあります。
ANAKUMA CAFEは、
カフェであり、
世界であり、
思想です。
私はこのプロジェクトを通して、
「ストーリーは装飾ではなく、基盤である」
ということを強く実感しました。
カフェをつくることは、
小さな国をつくることでもあるのです。
 

PRODUCT

ANAKUMA STORY

ANAKUMA ― 境界に生まれたクマたち
世界はずっと、
人間と自然の“関係の失敗”を抱えたまま進んできた。
人は自然を愛していると言いながら、
自然を使い捨てる道具にもしてきた。
森が伐られ、川が濁り、
生き物が静かに消えていくたびに、
人は目をそらす方法だけを巧みに進化させた。
問題の根本は、いつも手つかずのまま。
人類は「治すこと」より
「忘れること」のほうが得意だった。
 
■ 第一章 自然のほころび(機械の時代)
機械の時代、
木を切り、鉄を曲げ、AIによる完全な制御。
世界の形を“人間だけのもの”にした。
それでも、人は自然を失っているとは思わなかった。
自然はそこに“あるもの”だと信じていた。
だが本当は、
自然と人間の境界がすでにひび割れていた。
 
■ 第二章 光に逃げ込む人間(デジタルの時代)
光が世界を覆った時、
人は自然を光(ホログラム)の中に閉じ込めた。
映し出された森は、
本物より鮮やかで、
本物より便利で、
本物より傷つかない。
だが、「本物でなくていい」という感覚こそが、
人類の“自然観”を静かに変質させた。
人は自然を必要としなくなったのではない。
“自然を必要としている自覚”を失ったのだ。
 
■第三章 量子の揺らぎが命を模倣した時代(量子の時代)
次に人が踏み込んだのは、
世界のもっと深いところ──量子の領域 だった。
量子のゆらぎを制御できるようになると、
人類は「自然の器」を模倣し始める。
動物の体、植物の構造、
生命の器だけを模倣する技術が広がり、
自然は“複製可能な構造物”として扱われ始めた。
しかし、たしかに形は似ていても、
そこに宿るべき 記憶・魂 はなかった。
ここで世界は二度目の境界を踏み越える。
“自然そのもの”と“自然の複製物”の違いが
いよいよ曖昧になり始めたからだ。
 
■第四章 記憶が物に移りはじめた時代(アニミズムの時代)
量子技術により、
記憶は単なる想い出ではなくなった。
ついに人は 記憶を物質として取り出す ことに成功する。
悲しみ、喜び、愛情、衝動。
人が生きて体験したすべてが
光る粒として凝縮されるようになった。
それを人は 記憶結晶 と呼んだ。
結晶化された記憶は、保存され、移植され、
やがて自然の中にも散らばっていく。
川の底に沈む記憶。
風に混じる記憶。
木の根元に埋もれる記憶。
これによって、世界はさらに混ざり始めた。
自然に“人間の記憶”が入り込み、
人工物に“自然の構造”が浸透し始めたのだ。
境界は、もう線ではなく“滲み”になっていた。
 
■ 第五章 記憶結晶の誕生(記憶・魂の時代)
記憶が結晶化したとき、
世界は新たな歪みを抱えた。
あらゆる思い出は石となり、
誰の心の奥にも自然の光が眠るようになった。
しかし、人は気づかない。
記憶結晶はただの道具ではない。
この石は、
自然が人間の心を模倣した産物 だった。
人が自然を模倣し、
自然が人を模倣し返し、
境界が曖昧になりはじめる。
 
■ 第六章 時間が折れた日(時間観測の時代)
人は過去を覗き、未来を測った。
記憶とは時間の座標であることがわかり、時間観測が可能なった。
自然はこれを拒む術を持たない。
ただ積み重なる痛みだけが世界を満たしていく。
そしてある日、
限界が訪れた。
人類が観測しすぎた“記憶”が、
世界のあらゆる境界を押しつぶした。
── 記憶爆発。
自然も、人も、人工も、魂も、
すべてが溶けて混ざり合い、
一度、世界は無に帰した。
 
■ 第七章 境界から生まれた自然― クマノコドウ
世界が再び形を持ち始めたとき、
そこにあったのは森だった。
だが、それはもう人間が知っていた森ではない。
自然と人工、記憶と魂、
本物と偽物、過去と未来。
がすべて連続した、新たな自然空間。
世界の細部にいたるまで、
境界が曖昧なまま再構築された新しい自然。
その名を、
クマノコドウ と呼ぶ。
ここは、
自然と人間の関係の“結果”でもあり、
“問い”でもある場所。
 
■ 第八章 ANAKUMA ― 境界の生命
記憶爆発の光のなかで、
八つの存在が形を取った。
人間の技術で形作られ、
自然の痛みから魂を与えられた、
“境界に立つ生命”だった。
彼らはクマの姿をしていた。
人が作った模倣生命、
自然が宿らせた魂、
記憶結晶の光。
すべての結果として生まれた
新しい生命。
それが ANAKUMA。
彼らは、人と自然の断絶から生まれ、
その断絶を癒すために存在している。
※クマは人間によって生み出された者もいれば、
本物のクマに人工知性を与えられたクマもいます。
誕生の仕方はクマそれぞれです
 
始章
未来──クマノコドウ。
そこは、
自然と人工、記憶と魂、
本物と偽物、過去と未来が
境界なくつながった新しい自然だった。
その森の奥で、世界の痛みと記憶のしずくから生まれた
八頭のクマが静かに暮らしていた。
彼らは知っていた。
自分たちは、ただの生命ではないということを。
人間が忘れてしまった自然の痛みと、
自然が抱え続けた人間への願い──
そしてある日、森の奥の“ひらき”から風が流れた。
時をまたぐ風だった。
クマノコドウは未来の森でありながら、
過去へとつながる“時間の窓”を持っていた。
クマたちは考えた。
もし自分たちがこの窓を通って過去へ行けば、
人間たちに“未来の自然がどんな姿をとるのか”を
静かに伝えられるかもしれない。
しかも大仰なやり方ではなく、
日常のなかでそっと息づく形で。
そして彼らが選んだのは──
カフェ だった。
未来と過去をつなぐ通路の先に、
クマたちは一軒の店を構える。
ANAKUMA CAFE。
未来の森で育つ豆の香りは、
忘れていた記憶を呼び起こし、
人間の心の“境界”をひらいていった。
そして世界はゆっくりと変わり始める。
境界が溶け、関係が芽吹き、
新しい自然観が人々の心に宿っていった。
そして世界は問いかける。
本物とはなにか?
自然とはなにか?
境界とはどこにあるのか?
ANAKUMAの物語とは──
人間と自然の「関係の物語」。
その境界に立つクマたちが生まれた理由を探し、
未来の自然観を問い直す神話である。

キャラクター設定

自然循環時計 ー 8頭のクマの親和

 

ANAKUMA LOFI

クマノコドウの日常
 

京都ANAKUMA

店舗デザイン
 
御朱印デザイン