DREAD YAMADA

ドレッド山田プロジェクト:”バヤシ系”から”ドレッド山田系”へ―僕らがやるべきブランディングの全貌

ドレッド山田プロジェクトの思想と設計をまとめておきます。単なる「案件の振り返り」ではありません。二番煎じを反転させ、独自の文化圏を育てる――そのためのデザイン哲学と運用指針です。

0. 事実認識:いま僕らはどこに立っているか

起点はシンプルです。ドレッド山田は食系のトップインフルエンサー。黒背景×リズムカット×豪快料理の文法は完成度が高い。一方で、“ばやし系”の二番煎じというタグが無意識に貼られ、固有名が文化化していない。ここを切り替え、”ドレッド山田系”を生み出すのがミッションでした。
僕らが見たのは“数字”ではなく“由来”です。幼少期の厳格な躾、特に「食」に対する徹底指導。これはトラウマではなく規律から自由への転回を生む基礎体力になっている。美味しさを超えて「笑い」「豪快さ」「時間芸」を提供できる素地はここから来る。
出発点:二番煎じの否定ではなく、それを反転して“反主流”の核エネルギーにすること。

1. 立場宣言:ヒーローではなく“ダークヒーロー”

僕らが選んだ人格はアウトロー/ダークヒーロー。正義の味方ではない。「飽和したエンタメ」「退屈な常識」「鈍った食欲」を喰い尽くす側です。
ロールモデルは“ベノム”や“クロサギ”の立ち位置――悪ではないが、善の文法にも従わない。「世界を喰らう」攻撃性を美学に転用する。
この“攻撃性”は、嫌われるために使うのではなく、鈍った感覚を起こすためのショックとして使う。料理の豪快な崩し、巨大な口、荒々しい手つき――味覚だけではなく、視覚・聴覚・嗅覚・触覚の総合でやる。五感に殴りかかって「美味い」を取り返す。

2. コンセプト:“鬼×和イルド”

「鬼」は記号ではなく、姿勢です。 角を描き込むことが鬼ではない。常識の枠を超え、欲望とエネルギーをあえて剥き出しにする態度を“鬼”と呼ぶ。
ここに“和(日本性)”を掛け合わせる。家紋・能・陣太鼓のような構造美と、ストリートの野性(ワイルド)を合流させる。キーワードは和イルド(和×Wild)。和は静謐、Wildは騒々。静と騒を一体化することで、海外にも直感で通じる“強い象徴”を作る。

3. ロゴ思想:家紋“っぽい”のに、家紋ではない

外人ウケを狙って“ザ・家紋”に寄せるのは短期の正解であり長期の破滅。僕らは「家紋っぽい」に留め、抽象の余白を残した。
  • 荒々しいギザ(崩し):ドレッドの触感をアイコニックにする
  • 口のモチーフ:食らう存在の象徴
  • 結目紋の参照:「山」「田」の気配、読めなくていい。想起できればいい。
“説明すると終わる”。僕らは「理解を敢えて遅らせる」。その余白に考察文化が生まれる。

4. 食べられるロゴ:コンテンツへの逆流

鉄火巻きの断面の発想。四角い具材を四つ並べて切ればロゴが出る。
ロゴ→料理、料理→ロゴ。“食がロゴを再現し、ロゴが食を増殖させる”往還ループを設計する。ブランドが胃袋の中で増殖するイメージ。これがカルチャー化の最短距離です。

5. 色:オレンジという“注意と食欲”のハイブリッド

青はクールで良かった。が、食欲を冷ます。白は映えるが血が通わない
オレンジは注意(ワーニング)であり、食欲(アペタイト)でもある。
黒背景に沈むドレッドを引き上げ、鬼の警告色としてフレームに立ち上げる。「見ろ」と色が言う。
だからオレンジ。

6. キャラクター:分かりやすさの補填と“感情の運び屋”

ロゴは抽象度を上げた。だからキャラで“分かりやすさ”を足す。
  • 口の中はブラックホール
  • 髪と体を分離=ドレッドの存在感を増幅
  • 造形は狛犬・シーサーの系譜に置き、威嚇を意味する。
 →鬼という直接的表現は避けた。異形と既存の象徴を駆使して、鬼という概念をキャラ化
キャラは感情を輸送する器。サムネ、バナー、クレジット、グッズ。ロゴが“思考”を焚きつけ、キャラが“感情”を運ぶ。

7. MVV:インフルエンサーが「思想の骨格」を持つという実験

MVVは企業の専売ではない。個人が流されず、関わる人が迷子にならないための“重力場”として機能する。関係者はMVVを一読すれば“温度”“方向”“禁止事項”**が一瞬で共有される。制作は速く、判断は深くなる。

8. コアファン化:考察導線をデザインする

ショートは“広がる”が“定着”しない。だから掘らせる余白を仕込む。
  • 象徴の粒度:一発で分からせない。二手・三手で腑に落とす。
  • 夢リスト100:可視化された野望が参加余地を生む。チェックが埋まるほど“一緒に進んだ実感”が増える。
  • UGCの装置化:食べられるロゴ、模倣可能な儀式動作、音の合図。真似したくなる“型”を配る。
  • 五感演出:言語を飛び越え、海外に“音・匂い・手触り”で伝える
結論:ファンは作るものではなく、掘ってもらうもの

9. 二番煎じを越える方法:敵視ではなく、文法を更新する

大切なのは「AよりスゴいB」ではなく、“Aのフレームごと食べるC”を差し出すこと。
真似の上手さは否定しない。徹底的にパクって、自分の血で染める
その先にしか、文化は生まれない。
説明しすぎず、余白を配る。
怖がらず、粗さを残す。
五感で語り、言葉は後ろから追いかける。
これが、僕らが選んだやり方です。

 

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